
ゾーンは「スーパーサイヤ人」の状態。
でも、本当に大事なのは“通常時”をどれだけ強くできるかです。
一度でもゾーンを経験すると、多くのアスリートはこう思います。
「また、あの状態になりたい」
動きに迷いがなく、判断が速く、
力を入れなくても結果が出る。
自分の身体も、相手も思い通りにできる。
まるでスーパーサイヤ人になった時の感覚。
「いつもゾーンにもっていかないとダメだ」
と、試合前に神経質になるアスリートがいます。
完璧主義な方に多いのですが、
過去にゾーンに入れたときのルーティンをトレースして、
数週間前から丁寧に再現していくなど、
試合自体よりもゾーンに入ることに意識が向いていることもあります。
ただし、ここで忘れてはいけない事実があります。
スーパーサイヤ人は、常になれる状態ではない、という事実です。
ゾーンは「特別な変身」であって、日常ではない
心理学ではゾーンは
「フロー状態」と呼ばれています。
・課題の難易度
・自分のスキル
この2つが非常に高いバランスにあるとき、
限定された条件で一致した時に起こる状態が「フロー」です。
フロー概念を提唱したことで知られている心理学者のミハイ・チクセントミハイも、
ゾーン(フロー)は
「意図的に作り出すものではなく、条件が整った結果として生じる」
と述べています。
つまり、
ゾーンは狙って入るものではないということです。
「毎回ゾーンを基準にする」ことの危険性
ゾーンを基準にしてしまうと、
無意識にこう考え始めます。
今、ゾーンかどうか
あの感覚に近いか
今日の状態は良いか悪いか
これは脳科学的に見ると、
パフォーマンスを高めるために必要な注意(リソース)が、
「自己評価」に奪われている状態です。
この状態ですと、集中は分断され、
身体感覚は鈍くなります。
また、常に身体は進化、変化しているので、
過去の自分と同じであるはずがありません。
そんななかで当時の感覚に戻ろうと意識しても、
土台といして、それ自体がズレている状態なんです。
結果として、
ゾーンから最も遠い状態になります。
科学的にも「通常時の底上げ」が最重要
運動学習やスポーツ心理学では、
パフォーマンス向上の土台として
意図的練習(Deliberate Practice)
が重要だとされています。
心理学者アンダース・エリクソンが提唱した理論で、
特定のスキルや分野において卓越性を追求するために、計画的かつ目的を持って行う練習方法のことです。
常に最高の状態で行う練習ではなく
むしろ、「うまくいかない状態」で
できないことを練習していくなかで、
何に集中し、失敗しながら、どう修正するか
フィードバックを繰り返すことで、
通常時のパフォーマンスを底上げしていきます。
ゾーンは、この積み重ねのなかで偶発的に起こる「結果」であって、
練習や成長の「目的」ではありません。
本当の成長は「ゾーンがない日」に起きている
試合や練習のほとんどは、
緊張している
不安が少しある
身体が重い
そんな、万全ではない通常状態で行われます。
この通常状態のときに
何を意識して取り組むかか
うまくいかないときにどう立て直すか
自分の身体やメンタルをどう操作していくか
ここを積み重ねている選手ほど、
安定して強くなっていきます。
科学的にも、
パフォーマンスの安定性=競技力の高さ
とされています。
日々の小さくても着実な成長が安定した強さとなり、
結果を生んでいきます。
ゾーンを「目的」から「結果」に戻す
ゾーンは
作るものでも
維持するものでもなく
条件が整った時に、たまたま起きる現象です。
だからこそ、
ゾーンに入れたかどうか
ではなく
今日の自分で、どれだけ集中して取り組むことができたか
ここに目を向ける方が、
長期的な成長には圧倒的に有利です。
毎回スーパーサイヤ人になる必要はない
毎回ゾーンに入れるアスリートはいません。
それが科学的にも現実です。
大事なことは、
「変身できない日でも、どれだけ強く戦えるか」
通常時の積み重ねがあるからこそ、
たまに訪れるゾーンが、
本当の武器になります。
ゾーンは決してゴールではありません。
成長の途中で、たまたま見える景色です。
「あのときのゾーン」
にとらわれることなく、
「いまの自分」
をしっかりとつくって、向き合っていきませんか。
最後までお読みいただきありがとうございました。
◆体験メンタルコーチング
過去の自分ではなく、今の自分に意識を向けることはとても大切です。
もし一人で自分に向き合うのがつらかったり、難しければ、
一緒に話しながら見つけていきませんか。
