
こんにちは。スポーツメンタルコーチの江口康博です。
試合前、イヤホンをつけて集中しているアスリートの姿は珍しくありません。
ロッカールーム、移動中、アップ前。
それは単なる習慣でしょうか。
いいえ。
音楽は、多くのトップアスリートにとって自分をコントロールするためのツールです。
今回は音楽のチカラについてお伝えしていきます。
トップアスリートは音楽を「使っている」
例えば、テニスの大坂なおみ選手は、試合前に音楽を聴いて集中力を高めることで知られています。
ボクシングの井上尚弥選手も、入場前に音楽を通じて闘志を高めています。
彼らは「なんとなく」音楽を聴いているわけではありません。
音楽によって、
・気持ちを高める
・外部の雑音を遮断する
・自分の世界に入る
という状態を意図的につくっています。
つまり、
音楽を“流されて聴く”のではなく
音楽を“使っている”
状態なのです。
青山学院大学の箱根駅伝で「山の神」として注目を浴び、
現在はプロランナーとして活躍されている神野大地選手の言葉です。
「試合で結果を残すには身体の状態と同じくらいメンタルの状態が重要です。普段と同じ音楽を聴くことで心を落ち着かせ、平常心を保っています」
トップアスリートは、
自分がどうすれば集中できるか、落ち着けるか、パフォーマンスが上がるか、
自身の身体と対話しながら、自分を理解しています。
さまざまなコントロールする術を試して使いながら、
音楽もその一つとして使っているのです。
音楽が脳と身体に与える科学的影響
音楽を聴くと、脳内ではドーパミンが分泌されます。
これは「やる気」や「報酬」に関わる神経伝達物質です。
さらに、リズムは自律神経に影響を与えます。
テンポが速い音楽は、交感神経を活性化(覚醒・興奮)
ゆったりした音楽は、副交感神経を優位に(リラックス)
スポーツ心理学では「最適覚醒水準」という考え方があります。
パフォーマンスは、興奮しすぎても低すぎても落ちてしまいます。
このように音楽は自分の状態に応じて調整する”スイッチ”を入れることができます。
“上げる”だけでは足りない
多くのアスリートは、
「テンションを上げる曲」を持っています。
もちろんそれは大切です。
しかし、本当に必要なのは
今の自分は、上げるべきか?整えるべきか?
を見極めること。
興奮しすぎれば、
呼吸が浅くなる
力みが出る
判断が荒くなる
逆に落ち着きすぎれば、
反応が遅れる
積極性がなくなる
音楽は万能ではありません。
だからこそ、
「自分の状態」を知っている人が音楽を使いこなせます。
音楽で“自分をつくる”
トップアスリートに共通しているのは、
自分がどんなことをすれば、テンションが上がるか、
どうすればベストな状態に近づけるかを知っている
ということです。
音楽はそのためのツール。
ある選手は強いビートで闘志を引き出します。
ある選手は静かな曲で呼吸を整えます。
正解は一つではありません。
大切なのは、この曲を聴くと、
呼吸はどうなるか
身体はどう感じるか
思考はどう変わるか
を知っていること。
音楽を使う前に、
自分との対話を深めておくことがとても大切です。
最後に
音楽は魔法ではありません。
音楽を聴くことを、固定ルーティンにするのは良いですが、
それに固執し過ぎて、うまくいかなかったときに
心が捉われてしまうこともあります。
けれど、自分の状態を理解し、
意図的に使えば強力な武器になります。
あなたは、試合前に何を聴いていますか?
そしてその曲は、
あなたを「上げて」いますか?
それとも「整えて」いますか?
音楽も、他のこともうまく使いながら、
自分をコントロールしていく。
それもまた、アスリートの技術の一つです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
