
スポーツメンタルコーチの江口康博です。
今回は、誰もが感じていると思っている「ストレス」についてお話します。
「ストレス」と聞くと、世の中ではなにか悪いもの、解消したり排除しなければならないイメージがあると思いますが、本当にそうなんでしょうか?
また、同じような環境下でもストレスを感じる人、感じない人がいるのはなぜでしょうか?
まず、スポーツメンタルコーチングのなかでは、適度なストレスは一概に悪いものではないと考えています。
次に、実はストレスと捉えているのも自分自身なんです。
奥深い「ストレス」について理解を深めて、付き合っていくコツをご紹介していきます。
■「ストレス」とは一体何か?
よく「ストレスが溜まる」なんて言いますが、そもそも「ストレス」とは一体何でしょうか。
「ストレス」とは、もともと物理学で使われていた言葉で、「外からかかる力による物質の歪(ひず)み」のことを意味していました。
それが医学的にも使われ始め「外部からの刺激(ストレッサー)によって心身に生じる緊張状態」のことを指すようになりました。
では外部からの刺激を受けて、それをどう感じるか判断する部位はどこか?
それは私たちの脳です。
脳が外部からの刺激を「心地良いか」「悪いか」など判断して感じ取っています。
言い換えてみれば物事の捉え方を変えれば、ストレスに感じるかどうかが変わるということです。
ストレスを感じやすい人と、感じにくい人の差はここから生まれているのです。
■ストレスがあるのは当たり前
みなさんは「ストレス」について、どのように考えていますか?
多くの方が「悪いもの」と捉えていて「対処しなければならない敵」のように思っているのではないでしょうか。
昨今、仕事のストレスでメンタル不調になる、などの話をよく聞くと、世の中でもそのようなイメージになってしまうと思います。
実は、適度なストレスは、思考や行動を適度に活性化し、快適で張りのある、充実した生活をもたらしてくれるもの、成長や能力向上に繋がるポジティブな働きもしてくれるもの、と言われています。
例えば、このようなストレスがない状況だったら、あなたはどう思いますか?
・試合の結果も期待されず、なにも求められていない
・練習参加も自由でやらなくてもよい
・仕事がなくて「干されている」状態
こんな状態だと「寂しい」「つらい」など感じてしまうのではないでしょうか。
イチロー選手のインタビューのときの言葉です。
「選手である以上、プレッシャーは感じていたいと思います。プラスにするもマイナスにするも自分次第です。プレッシャーのない選手でいたいとは思いません。」
人類(他の生物も)が生きていく上で、ストレスはつきものです。
ストレスは排除したり、無視したりするのではなくどう付き合っていくかが重要です。
■ストレスを感じるときはどんなとき?
では、どんなときにストレスを感じるのか?
人はより良く生きようと思っており、現実とのギャップを感じたときに、何らかのストレスを感じます。
私もストレスを感じたときはどんなときか、思い返してみました。
「計画通りに仕事を進めようとしたけど、思うようにできなかった」
「誰かにやってくれるように期待していたのに、やってもらえなかった」
「急に問題が起きて、対処せざるを得なくなり時間が取られた」
ストレスを感じるとき、必ず自分が決めた何かしらの前提が存在する場合が多いのです。
「自身が〇〇だと思っていたのに、××だった」といったような前提です。
最初に自分が「こうしたい」「こうあって欲しい」と思うことが前提にあり、それが自分の思い通りにいかない、自分が思った結果と違ったときにそのように感じるのではないでしょうか。
ストレスの原因を外部要因に求めることがよくありますが、実はストレスは、自身の考え方や価値観、認知の癖によって自分自身が生み出していることが多いのです。
例えば、強い思い込みがある、失敗を過度に恐れる、完璧主義、など自己評価や認知の歪みによって、ストレスを増幅させてしまうことがあります。
自分自身のなかで勝手な決めつけや期待、思い込みをすることが、ストレスにつながる一つの原因なのかもしれません。
また、よく「ストレスを発散する」と言いますが、一時の発散は、池に溜まった水を出すようなもので、また雨が降れば溜まってしまいます。対処法だけではなく、ストレスが溜まらないような心の構造にすることが重要です。
イチロー選手もインタビューで”仕事は基本、思い通りにいかない”と言っていました。
何が起こっても「そういうもんだ」「それが当たり前」といった考えを持てると、同じことが起こっても違った捉え方ができます。
■上手なストレスとの付き合い方
一般的に、ストレスを心身に感じる原因としては、思考、食事、自己受容のアンバランスがもたらすもので、
どれか一つでも欠けると良くないとされています。これらのバランスを良くしていくことでストレスを受けにくくなると言われています。
ではその上で、ストレスを感じた際には、まずは付き合い方や見方を変えてみてはいかがでしょうか。
このような考えだけでも随分違うと思います。
①ストレスへの見方を変える
ストレスを敵として立ち向かう表現が使われています。
これをちょっと変えてみましょう。
「ストレスに向き合う」
⇒ 「ストレスは受け流す」(生きていく上で常にあるもの)
「ストレスは悪いもの」
⇒ 「ストレスは必要なもの」(自分を成長させる要素の一つ)
②ストレスを感じにくくする
シンプルな対策では主に下記の対策があります。
・運動習慣を持つ
・規則正しい生活
・相談できる人(カウンセラー)を見つける
また、このようなメンタリティを持てると、自身の思い込みが少なくなり、ストレスを感じにくくなると思います。
・楽しみなことを見つける
・小さなことにも幸せ、感謝の気持ちを持つ
・人とのつながりを大事にする
③コントロールできないことをコントロールしようとしない
最後に、上述の前提の話もそうですが、人はコントロールできないことをコントロールしようとするとストレスを感じます。
ただ、コントロールできないものはどうしようもないので潔くあきらめましょう!
コントロールできないことは放っておいて、今自分ができることに集中します。
そうするとストレスが減ります。
アスリートでも、海というコントロールできない自然で、ほかの選手とも競い合っている五十嵐 カノア選手(サーフィン・東京五輪代表)の言葉です。
「新たなファンなど多くの人が見てくれると思うので、そのプレッシャーを感じながら頑張りたい。サーフィンは海との戦いでもあるし、プレッシャーやほかの選手との戦いでもある。自分がコントロールできることは準備しかない」
このようにトップアスリートには自身ができることに集中し、準備をする方が多いです。
あなたが、大会や試合に向けてストレスを感じているとすれば、今できることはなんでしょうか?
自身ができる準備やトレーニング、体調管理などに集中して取り組んでいきましょう。
ストレスに悩んでいる方にとって、ストレスへの見方、捉え方が少しでも変わっていただければとても嬉しく思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。