「ゾーン」に入る人と入れない人の違い

アスリートと集中力に関する話をしていると、よく「ゾーン」について聞かれます。

では具体的に「ゾーン」とはどういう状態なのか?「ゾーン」に入るのはどうすれば良いか?

今回はみなさんが知っているようで知らない「ゾーン」についてご紹介します。

そもそも「ゾーン」とは?

「ゾーン」は、アメリカの心理学者ミハイ・チクセントミハイが提唱した「フロー」と呼ばれる心理状態とほぼ同じ状態です。

どんな状態かというと
・集中力が非常に高まる
・周りの景色や音などが意識の外に排除され自分の感覚だけが研ぎ澄まされる、
・活動に没頭する
・時間の感覚がなくなり遅く感じたり速く感じたりする
・驚異的な集中力で予想以上のパフォーマンスや結果を出す、
などといった状態です。

トップアスリートも「ゾーン」についてこんな話をしています。

・井上尚弥選手(ボクシング) 「1秒の間に何コマも出てきた感じです」

・内川聖一選手(プロ野球) 「落ちる球が、目の前でサッカーボールぐらいに大きく見えた」

あなたはこんな経験ありますか?(私は残念ながらありません笑)

ゾーン、フローについて

では、どうすればゾーンに入ることできるのか。
その前にゾーンの代表的な状態を振り返ってみましょう。もう一度掲載します。

・集中力が非常に高まる
・周りの景色や音などが意識の外に排除され自分の感覚だけが研ぎ澄まされる、
・活動に没頭する
・時間の感覚がなくなり遅く感じたり速く感じたりする
・驚異的な集中力で予想以上のパフォーマンスや結果を出す

もう一度見てみて、ご自身の過去、またはご家族でこんな状態を見たことありませんか?
そう!「子どもが楽しくて夢中で遊んでいる状態」によく似ていますよね。
子どもが、ブロックに熱中する、人形遊びに夢中になる、などの姿を見たことがあると思います。
この心理状態について2つの考え方から述べていきます。

U字仮説
ゾーンのようなパフォーマンスを発揮できるときは「緊張、興奮の心理状態」が関係しています。

×焦り、緊張、ガチガチ、焦りやイライラ、不安の状態、
ではできず。
×やる気なし、注意散漫、あきらめている、なげやり
でもダメです。

その間のちょうどよい心理状態である、
〇一心不乱、軽い緊張、ワクワク
が良い状態と言われています。


フロー理論
ポジティブ心理学で有名なミハイ・チクセントミハイはフローについて、「挑戦の難易度」と「スキルレベル」が関係していると提唱しています。(下記の図参照)



自分の能力以上のこと、例えば、入部したばかりなのに、いきなり大会で大事な試合に出るように言われると「Anxiety(不安)」になりますよね。他にも、ちょっと自分には荷が重そうな役割を与えられたときも「Worry(心配)」の状態になると思います。

逆に、自分の能力だと簡単にできること、例えば負荷や難易度が軽い練習。チャレンジは「Relaxation(リラックス)」「Control(コントロール)」の状態となり、物足りない、自分の成長につながらない状態となってしまいます。

最も良い状態は、挑戦の難易度と自身の能力が高いレベルにある「Flow(フロー)」状態、
または「Arousal(覚醒)」から能力を上げて「Flow(フロー)」にすることです。

このときの目標や課題は、なんとか達成できるレベルであること、達成がわかりやすい、結果がすぐわかる、ものが良いとされています。

ゾーンに入るには・・・

ゾーンやフロー状態について学術的なことはわかったと思います。

ではどうすればゾーンに入ることができるのか?

レスリングの吉田沙保里選手はゾーンについてこのように言っています。
「基本的に、ゾーンには入ろうと思って入れるものではないです。ゾーンは究極のメンタリティーですから、それを求めすぎたりとらわれすぎたりすると、逆にゾーンから遠ざかります」

トップアスリートですら一握りしか経験していない状態なので、簡単ではなさそうですね。
ただ、ゾーンそのものではないにしろ、近づけることはできると思います。

ゾーンやフローの状態は意識しながらも、
子どものように「楽しいこと」「ワクワクすること」を大切にして競技に取り組んでみてはいかがでしょうか。

競技をはじめた頃は「昨日より速く走れた」「リフティングが10回できた」「新しい技ができた」など、成長できることが楽しくて、ワクワクしながら夢中で練習したこともありましたよね。
ゾーンのように力を発揮したい、という方は、あのときの気持ちを思い出して、競技に取り組んでみることをおススメします。
あらためて今やっている競技のおもしろさを認識する、自身の成長が感じられてワクワクすると新たな自分の気持ちが見えてきて、ゾーンに近づけるかもしれません!

最後までお読みいただきありがとうございました。