100mile(160km)レースを初挑戦で完走できたメンタルとは?!

スポーツメンタルコーチの江口康博です。

トレイルランニングの世界では、100mile(約160km)というレースが存在します。
100mileレースはその距離と難易度、過酷さから多くのトレイルランナーたちにとって最高峰の挑戦とされています。

先日、私は「天ケ瀬100」という京都府宇治市の100mileレースに出場して、見事完走することができました!!
距離は16km周回コース×10周=160km、累積獲得標高は約7,700m、33時間36分でゴールしました。

昨年から100mile完走を目標にして、練習はもちろん、補給やペースなどレースプランを考えて念入りに準備していましたので、ゴールしたときには本当に嬉しかったです。

100mileに挑戦するにあたって、私自身がスポーツメンタルコーチでやっていることを実践してみましたので、その方法と気付きをご紹介させていただきます。

”なんとなく”完走できそう

実は準備している段階から「完走できそう」と思っていました。
途中でリタイアするイメージは全く頭に浮かんでこなかったのです。

超長距離になるので、足の怪我、胃腸トラブル、眠気や体調不良など、本当に何が起こるかわかりません。
必ず起こるであろうトラブルには、持てる知識や手段で対処しなければならず、無事に完走できる保証はありません。
(今年の天ケ瀬100レースの完走率は31.5%でした)

不思議ですよね(笑)
これまでの大会では最長距離が80kmだった私が、なぜ160kmを完走できると思ったのか?

自身の考えを表現するとしたら「なんか完走できそう」「なんとかなる」「あきらめない」といった感覚でした。

マイル初挑戦、何が起こるかわかりません。
多くのマイラーの方などにアドバイスを聞いて、ネットや本でも色々調べて、「どうすればいいかな」「こんなことをやってみようかな」といった、準備や練習でも創意工夫することを楽しんで取り組んでいました。

そのときに「絶対に完走してやる」「リタイヤしてはいけない」など、自分を追い込むようなことは全くありませんでした。

結果的に、体調や足の快調など幸運もありますが、スタート後の数時間は大雨というコンディションが悪い中でも、足が終わることもなく、胃腸トラブルもなく、眠気もなく、最後まで元気に走ってゴールすることができました。


みなさんにもこんなように「なんとなくできそう」といった経験はありませんか?

実はメンタルの世界ではこれは「自己効力感」(世の中で言う「自信」)があったということなんです。

今回の私の100mileの例ですと、次のポイントが自己効力感を持てた要因と思います。

・過去の50km~80kmの大会を完走できた経験があった
・マイラーの友達の大会を完走した経験を話としてたくさん聞いていた
・友達に「江口君みたいにしっかり走ってたらいけるよ」と言われていた
・約半年間の練習、大会前1週間前から食事や睡眠、休息などスケジュール立てた準備ができていた
・走るペース、補給の仕方、着替えなどのさまざまなプランを立てながら、レースのシミュレーション(イメージ)をしてきた

こんなポイントが重なって自己効力感が向上していきました。
そして、完走という結果がついてきたのだと思います。

※「自信」についてはコラム「世の中のほとんどの人が勘違いしている「自信」とは」でご紹介しています。

つらいときは「笑顔のチカラ」を使う

今回の100mileレースは絶対につらくなるだろうと思っていましたので、常に笑顔を意識していました。

笑顔で走ると不思議とつらいことも前向きに思えるんですよね。

・スタート時に大雨でも、「雨は走りにくいけど涼しいからラッキー」
・雨のせいで泥でズルズル滑るコースになっても、「どう攻略してやろうか?」
・空腹などで疲れてきたら、「次のエイドのご飯を楽しみにしよう」

といったように全部プラスに考えていました。

なんとなく全部を前向きに考えられてトラブルを楽しむような感覚でした。


実は科学的に笑顔には心身にこんな効果をもたらすと言われています。

・身体の免疫力がアップする
・ストレス解消やリラックス
・ポジティブな気持ちになる
・コミュニケーションがスムーズにいく
・脳の働きが良くなる
・スポーツのパフォーマンスが上がる 

おもしろいことに「笑顔の表情」をつくるだけでも効果があります。
つらいときでも笑顔の表情をつくることで、表情筋が脳に伝わり、「楽しい」と認識させます。

今回はこの「笑顔のチカラ」をフルに使って乗り越えられた部分は大きいと思います!

みなさんも試合や大会でつらいときは笑顔をつくってみましょう。
きっとプラスになるはずですよ!

余談ですが、レースずっと笑顔で運営スタッフの方と話していたら、
「元気だねー」とか「もう9週目なのに全然大丈夫だね」とか他人から言われるので、自分もさらに元気になりました(笑)

運営のみなさんに感謝、一緒に走ったランナーに感謝

今回のレースで一番思ったことが「感謝」でした。

●運営スタッフ、ボランティアの方々
大会の準備、エイドで食べ物、飲み物の提供、コース誘導、コース上の巡回など、昼夜対応いただいたお陰で私たちランナーは安全に心置きなく走ることができました。

コース上のあちらこちらで明るく励ましのお言葉をいただいたり、楽しくお話したり、つらいときに本当に助けられました。
レース中に大会関係者の方と会うと、心から「ありがとうございます!」と言っていました。


●一緒に走るランナー仲間
トレイルランニングという特性上、まずは自然を含めたコース、そして自分自身との闘いが大部分を占めますので、出場するランナーは競争相手ではありますが、どちらかというと仲間といった感覚です。

レース場でもペースが会うと一緒に話しながら走りますし、すれ違うときは「ナイスランです!」と励まし合います。
お互いがつらいなかですので、これが本当に勇気付けられるんです。

私もラスト3周は、ある方とほぼずっと一緒に走っていましたが、トレランや人生のことなど色々話しながら、楽しく走れて本当に感謝です。


●応援してくれる近隣の方
近隣住民の方や登山者とも、すれ違う時に必ず挨拶をしていました。

挨拶すると「何か大会やってるの?」と話になり、大会の説明をすると、みなさん笑顔で「頑張ってね!」と応援してくれます。
迷惑がられても不思議ではないのに、応援してれるなんて。。。
「ありがとうございます!」と言いつつ走っていきますが、毎回パワーをもらえました。

●自分の身体
今回一番びっくりしたことが、身体がほとんど悲鳴を上げなかったことです。

足底筋膜炎、膝痛、肩コリなど、これまで長距離を走ると何かしら痛みが出ていたのですが、これまでで一番長い距離を動いたのに今回は故障ゼロでした。
もちろん注意深くケアしながら走っていましたが、奇跡的に頑張ってくれた自分の身体にも感謝しました。ホントに。

「感謝のチカラ」は実際にやってみるととても効果がありました。
特に自身の身体やメンタルがつらいとき、困難な状況でも嘘のようにうまくいきます。

コラムでもご紹介していますので、ぜひ読んでいただき「感謝のチカラ」を使ってみてください。

<コラム>
トップアスリートが使っている「感謝の力」とは?!

まとめ

他にもたくさんお話したいことがありますが、また別のコラムでご紹介しようと思います。

これまで私がスポーツメンタルコーチで学んできたことを、自分自身でも実践して成果が出すことができました。
そして、アスリートの気持ちがほんの少しだけわかりました。

そして今回のレースで一番感じたことが「楽しかった」ということです。
もちろん、不安がよぎることやつらいときもありましたが、終始楽しめたことが結果につながったと思っています。

もし、競技でつらいときや大変なときに、このコラムを読んで、楽しむメンタルを知るきっかけになれば幸いです。


最後までお読みいただきありがとうございました。